「奥に戻れや」

「きゃあ」

男が振り回した左手が、近くで立ち竦む私に当たった。

咄嗟に腕を前に出したが体格差が有りすぎた。


直撃した私は男の望み通り、部屋の奥まで吹っ飛んだ



「鈴、大丈夫?」

素早くカズが近寄る




だけど、もう。

私には恐怖心でいっぱいだった。


自分を自分で抱き締めて――

ただ、震えを止めるだけ。
ただ、弱音を吐かない為。




「少しぐらい見せしめがあっても良いよな」

男が呟き、歩き出す。


さっきまで無意識に弄っていたナイフを、今度は意味ありげに動かす