帰らなきゃいけない。
帰りたくない。

相反する2つの気持ち


「俺、近々そっち帰るから」

「え…?」

「あいつ等の事も思い出してんだろ」

「…うん」

「今度顔見せてやれよ。喜ぶぞ」

「私も、会いたいな…」


「よし!和也に会うんだろ。そろそろ行け」

「うん、ありがと」

今度こそ、タツに背を向けた。


最後に聞こえた、小さな言葉

―――悪かったな。





タツにこの傷を見せた事は無い。

でも、気付いて無い筈は無い。

最初は……カズの傷ばかりだった。
私の傷にはハンカチが捲かれてたし、抱き合ってたから血が付いてても不思議じゃない。

だから隠した。
ずっと、ずっと……


それにタツが触れてきた事はない。