何かを諦めるような目


「鈴」

「それなのに、叩いてごめ…ん」

やっと俺を見た鈴の目が、今度は見開かれた。

「血!口が切れて……ごめん。ごめんね」


そっと口の端を触る。

冷え切ったその手が触れた事で、痛みが走った。


でも、切れたのは樹のせいだろう。
いや、確実に…


「鈴のせいじゃねぇよ」

「でも私が叩いたから」

「あんなの叩いたに入んねぇよ」

「でもっ」


……うるせぇ。

そう思った途端、俺は鈴の口を塞いでいた。

触れるだけの、優しいキスで