side*蓮司
高校の入学式
紅燕は俺も幹部も同じ高校。
迎えの車が校門前に停まってる。
が、その回りにはうるせー女共
「煩い」
「邪魔って事に気付きゃ―いいのにな」
珍しくポツリと呟いた樹に光が同意する
校門を過ぎ、車に乗ろうとした時だ。
「…紅燕………なの?」
小さな呟きが聞こえた。
呟いた女は直ぐに見つけた。
助手席に乗り込む翔太の肩越し。
ウザイ女共の壁の奥に
あの女だ!
昨日の――――――
「蓮司?」
車に乗り込まねぇ俺に声がかかった。
止まっていた時間が動き出したように、煩い声が聞こえてきた
周りに居るのはその原拠の女共
「何でもねぇ」
それだけ言い、車に乗りこむ
車は女共を無視して走り出す。
俺達、紅燕のアジトへ
「暇だなぁ~」
「仕事しろ」
「女の子へのメールに忙し~の」
「………」
いつもの溜まり部屋
翔太と祐のやり取り
皆いつも通りの行動だ。
ただ俺の頭ん中をあの女が占めてるだけで……
「今日女の子誘う暇無かったしなぁ~」
「……………」
いつも通りの祐には誰も構わない。
「校門来てた子、誘や~良かった」
「……………」
ただ、うざいだけ。
「なかなか可愛い子居たよな~」
いつもなら。
「制服で学校分かるか?」
いつもなら、だ。
反応した全員が声をかけた俺に素早く振り向いた
「……蓮司?どうし「おぅ!勿論分かるぜ!」
女嫌いな光が非難めいた目で訊いてくるのを祐が遮った。
「今日来てたんだろ!んで、どんな制服だ?」
「紺の制服に赤いリボン」
後は知らねー。女共の壁に隠れてたし
「商業かぁ~赤って事は同じ1年だな」
祐が即答する。
「新入生まだチェックしてね~なぁ~」
あそこは女の子多いから。
なんて言ってる祐はもう用済みで
素早く翔太がパソコンで画像を出した
「これだ」
「姫でも作る気か?」
姫―――俺達紅燕の護る女
「そんなんじゃねぇよ」
ただ。
ただ、気になっただけ。
その理由を知りたいだけだ。
あの女を――――
「見つけ出せ」
紅燕は動き出した
今はまだ、まだ静かに
――――――――
――――――
――――
学校は楽しい
今までと違う科目が増え、新しい友達もできた。
ただ変わらない事もある
蓮司様が―――
紅燕が―――
朝から晩までそんな話題ばっかり
「鈴ちゃんは?誰が好み?」
「…………秘密」
メンバーを知らないとも言えない。
もうちょっと別の話をしようよ
……とも言えない。
「紅燕の誰かと付き合いたい~」
……結局これに辿り着く話は毎日の事で
平凡で平穏で平和な日々
忙しいくらい目を瞑ろう。
私の幸せな日常
――――――――ザワッ
帰りのSHR
担任待ちの時間に突如騒がしくなった。
学校中だろう。
悲鳴すら聞こえる……
「………何?」
教室から離れられない私達のクラスを取り残してどんどん騒がしくなる。
紅燕―――
校門前―――
立花蓮司―――
ざわめく廊下から情報が次々に入ってくると生徒達は窓際に集まった。
「紅燕の車だ」
誰かがそう叫んだ
紅燕が来た――――
―――――――何しに?
もう、その後は凄かった。
天下の紅燕様が来たせいでSHRは無くなった。
収拾がつかない。と言った方が正しいかもしれない
まぁ、とにかく帰れる訳だけど…………………問題は校門の壁
人で出来た壁
「鈴行くよ!」
当然、夏美も壁になりに行く。
「ごめん。私は帰るよ」
「え゙~~~~」
非難の声をあげられても…知らない。
「ほら、早く行かなきゃ。車行っちゃうかもよ」
「あ!やば。鈴また明日ね」
夏美追い出し成功
伊達に付き合い長くないよ
「んじゃ、私は帰るか」
――勿論、裏から。
―――裏。
と言っても普通の道だ。
運動場を横切るからちょっと恥ずかしいだけ
自転車では通れないが駅には此方からの方が近い。
だから多くの生徒が使う道でもある。
「何しに紅燕が来たんだろう」
考えても分からない事を考えるのは、裏から下校する気分から
私の家へは遠回り
ちょっとの嫌味を込めて。
ちょっとだけ…ね
「やっぱりこっちか。乗って」
目の前に止まった車の助手席から急に声がかかる
優しそうな男の人
見知らぬ―――だけど。
「え?」
「乗って」
……何故に?
誘拐犯でももっとまともに誘う。
誰がこんな事で付いて行くか
「何か知りませんけど、乗りませ「手間取らすな。乗れ」