私、藤林鈴<フジバヤシスズ>
入学式を控えた高校生
普通と、変わった所といえば
両親が居ないとか
一人暮らしとか
色が白いとか……
でも普通の普通。
親代わりに叔母さん達居るし、一人暮らしだって叔母さんの娘の麻美さんが嫁いじゃったからだし、色が白いのは…生まれつき
美白
なんて言葉があるけど、とにかく白くて嫌なほど
だって写真とかプリクラとかで浮いちゃうんだもん
小さい頃はこの白さで苛められたりもした
でも、まぁ普通の学生
ただいま街を散策中
明日からの高校生活と同時に部屋を模様替えし、やっと終わった夕方から街に出てきた。
春先でもまだ寒い
そして暗くなるのが早い
「今日は出来合いの物で夕食済ませちゃおっかな…」
暗くなった空を見ながら考える
―――ガンッ
「…………何、今の?」
賑やかな繁華街に似合わない音
通過中の右にある小道から
「……どうしよう。………少しだけ。ちょっとだけ。覗くだけ」
好奇心には勝てないんだよね
音を立てずに静かに進む
小道といっても幅はある
でも長さもある
静かに…
静かに角を覗き込む。右か左かなんて知らない。
静かに右を―――
そして左を―――
「……………っ」
殴る音だと予想はあった。
だから悲鳴なんてあげない
まず目にはいった男物のスニーカーは地面に倒れてる人の
そして立って居たのは黒の服を着た男
闇に溶け込みそうな
闇を支配しそうな、そんな姿――
同い年……ぐらい?
後ろ姿を見ながらそんな事を考えてた
いや、見つめていた
「てめぇ、なんだ?」
だから男が振り返った時、対応も遅れた。
「……ぁ…の。あ…」
喋りたい事が纏まらない時の癖。―――らしい。
口をパクパクさせるが、これしか出てこない。
その間にも男はこちらに足を進める
暗がりで見えてなかった顔が見えてきた。
格好いい―――
整った顔立ち
切れ長な鋭い目
そして鮮やかな赤い髪
綺麗な赤。
『赤』なんて表現ではなくもっと―――
「なんだと訊いてる」
先程よりも声音が下がった。
やばい。忘れてた。
またしても見とれてしまってた
「ぁの、…………うしろ!」
私が叫ぶのが早いか、男の反応が早いか。
振り下ろされた物を躱す
ゴツッッ―――
鉄パイプだ。
避けたことで鉄パイプは地面に当たった。見事に
どんだけ強く振り下ろしたんだよ……
「不意打ち…か?」
少年がニヤリと笑う
そんな間にもぞろぞろと男達が現れてくる。
10人ぐらい居るかもしれない
逃げるべきか叫ぶべきか
だけど、目が離せない。
怖いとも思う。
けど…冷静な自分に少し驚いた
「頭数揃えりゃ勝てるとでも思ったか?」
フッと笑う少年
その後は早かった。
綺麗な『赤』が夜闇に舞った
鉄パイプを避けては殴り、躱しては蹴り飛ばし
武器を持った人を早々に片付け、残りの人達も殴る蹴るで倒していく。
鮮やかだった。
圧勝で終わり
―――倒れた男達は片付け役として残った男達に連れられて、去り
また、2人だけ取り残された。
「……………で」
で?
「………あ、私。私は………………や、野次馬?」
あ…やっちゃった。
「ふ~ん」
不適切な答えに興味なさそうに応え、再びこちらに歩いて来る
やっぱり綺麗
顔をまじまじと見るけれど、見れば見る程に思う
切れ長の黒い目
鼻筋の通った鼻
薄く形の良い唇
色香すら漂いそうだ。
―――あ、唇のは「……んぅ」
理解するのに時間がかかった
目の前にはあの男。
―――――のドアップ
「……ふぅ…ん……………ぁ」
その距離はゼロ
いや、マイナスだ。
舌が入ってきている。
キス……されてる
そこまでは分かった。
が、どうしていいのか分からない。
掴まれた腕は力強く離れることが出来ない