警察に追いかけられ散り散りになるバイク達


やっぱり総長だからか、しつこく後を付いてきたパトカーをあっさり撒いた蓮司は流石だと思えた。


それでも倉庫に着いたのは最後のほう。
2階に上がると皆が寛いでいた




「お疲れ~。鈴こっち来いよ」

光が自分の隣に呼んでくれる。





けど………正直、無理。

閉めきられた空間に、煙草の匂いと冷房の寒さが充満している。

長居したら絶対気持ち悪くなる。

少ししたら外に出ようと決めて光の方へ向かった




10分経ったかな?
まだ5分位?

時間の経過が分からない。
ただ気持ち悪くなっていくだけ。



―――もう限界だ


「ごめん。外、出て来る」


一斉に此方を見てくる。
だけど構ってられない。
直ぐに扉へ向かった。

「鈴、気分悪いのか?もしかして酔ったか?」

「違う。大丈夫…」

そんなんじゃない。

「薬あるぞ」

「違う…の。外、出れば大丈夫だから」

引き留める光の手を離してまた扉へ




もう限界。
寒い――――


side*蓮司



「ごめん。外、出て来る」

急に声を出した鈴
翔太に今日の暴走の被害を聞いてた時だ。

一番は焦った。
また帰ると言ってるのかと思った。

何故?
思い浮かばない。

安全に、怖がらせない様に走らせた。

光の後ろに乗せるのが嫌で、無理矢理乗せた自分のバイク

スピードだって出してない。
鈴も怖がる様子を見せずに乗ってたはず。
なのに―――



だけど顔を見ると真っ青

白い肌が更に白く見える。


声をかける光になりふり構わず外へ出て行った―――


「酔ったんじゃねぇの~」

「違うって言ってたろ」

皆が固まる中で呑気な声を出す祐に光が噛み付く



「煙草」

「あぁ、そうかも」

突然呟く樹に賛同した翔太

何の事だよ


「女性って煙草の匂い嫌うだろ。普段吸ってる俺達には分からないけど、この部屋かなり充満してるかもね」

「そんなんで気分悪くなんのかよ」

「鈴ちゃんが煙草苦手かどうか、先に訊いとくべきだった。って話。蓮司どうする?」

俺に尋ねる翔太。
んなもん決まってる


「行ってくる――」


鈴の居場所は下の奴らに訊いてすぐ分かった。

外の喫煙所

なんでまたそんな所に居んだよ。
苛立ちを抑えて向かう





「……なんでこんな弱いんだろ」

小さな呟き


弱い?違うだろ。
お前は強い。いや、強くあろうとし過ぎだ。

強い目で――涙を隠し。
嫌と言った事があったか?

泣かせたい。

違う。泣かせてやりたい。
俺の腕の中で縋りつく様に―――――




「鈴」

「っ蓮司?なんで……」

顔を上げた鈴はまだ顔色が悪い。


少し間を空けて隣に腰を下ろした


「顔色恐ろしいでしょ。幽霊みたいって自分でも思うの」

「…喋って平気なのかよ」

「大丈夫だよ。あ、ホントに酔ったんじゃないからね」

「…あぁ」






「……………」

「……………」

「蓮司?一人で平気だよ?」

「あ"?」

こいつはまだ他人の心配すんのか?


「……昨日ごめんね」

「はぁ。……さっきも聞いた」

「うん。でもごめん」


「……………」

「……………」

沈黙が続いくと無意識に手が伸びてしまう。ポケットの中の煙草へ


「……お前は弱かねぇよ。もっと頼れ」

深刻そうに呟いてたくせに、俺相手に普段通り接する態度が気に食わねぇ。

頼れよ。
俺を―――


ありがとう。
小さく呟く、そんな言葉が欲しいんじゃない。


「何に悩んでんのか知らねぇよ。でも必ず俺が力になる。必ず守るから。話せよ、叫べよ、泣けよな」

「れ…ん……じ?」

「守るって決めたんだ。もうお前を―――鈴を傷付けない」



俺の決意だ。
傷付けた事を悔やんだから。

鈴を守り通す。俺の手で――


「ありがと」


照れた様ににっこり笑う。

けど………
意味、分かってねぇだろ



「俺の女になれよ」


怖がらせないように。
ゆっくりと鈴の後頭部に手を当てて引き寄せる


息を飲むのが分かった。





「私………」


長い沈黙の後はそれだけ。
悩む理由は何だ?

あの男なのか――――


「鈴。悩むぐらいなら俺を選べ」

「私………」



俺の胸を押し返す。

離れていく体と再び交わる視線



「私を―――蓮司の彼女にして下さい」


だせぇ。
こんな一喜一憂するなんて

鈴の顔なんて見れる訳なくて視線を外す。

「蓮司?」


途端に心配そうに訊いてくる。

少し前に気付いた。
鈴は天然というか、どこか抜けてる

最初はあれだけ警戒してたのに、今じゃコレだ。
あれぐらい警戒心を常に持っとけよ


手で顔を覆うがどうしようもない。
まじでダサい。






―――――ガチャ。


「あ、蓮司さん。鈴さんも。邪魔して良いっすか?」

開いた扉と共に来たのは下の奴ら3人。
煙草でも吸いに来たんだろう


倉庫の1階は禁煙だ。

ガソリン等があるからと、颯斗さんが決めた。
変な決まりだが、ちゃっかり今でも守られてる。




ん……煙草?