「俺もあいつ等も男だぞ。もっと警戒しろ」

「……ごめん」


俺に犯された事を忘れる訳はない。つい、数ヶ月前の出来事だ

それに、この容姿だ。鈴には沢山男は寄って来るだろう。
俺と居るせいで他の奴らも目を付けてる。

黒龍がいい例だ。



「そういや黒龍と会ってたのか」

鈴が此処に来なかった1ヶ月間の行動をさっき聞いた。

「ごめん。約束破って」


約束の問題じゃねぇ。
身の心配してんだ


「幼なじみでも何でもだ。男には警戒しろ。あいつ等も族だぞ。何しでかすか分かんねぇからな」

「…………ぅ」

「は?」


俯いてた鈴が何かを呟いた。
かと思えば今度は顔を上げてはっきりと


「違う。黒龍はそんな族じゃない」


俺を真っ直ぐ見つめる目

強い意志を込めた瞳
―――が、大きく見開かれた


「ごめんっ。ごめん……私」

そのすぐ後には激しい動揺

「ごめん…私、………違うの」

「鈴?落ち着け」

「こんなのっ。こんな……違っ」

「鈴。いいから落ち着け」

暴れてる腕を掴むがそれでもまだ暴れる。


「鈴。…………鈴!」

強く名前を呼ぶとやっと暴れるのを止めた

不安げな表情が俺を見上げる




「蓮司?どうした?」

騒ぎを聞いて翔太達が部屋に駆けつけて来た


翔太の姿を見た途端、抱き付き縋った

「ごめん、帰る。お願い翔太……帰らせて」

俺の手を振り解いて。



「………分かった。鈴ちゃん行こっか」

「おい翔太!」

こんな状態の鈴を帰せる訳が無い。
翔太に伴われて歩く鈴の手を掴もうとすれば

「蓮司、そうゆう約束だから今日は連れて帰る」

翔太に阻まれ睨まれた。




「鈴、明日も来んだろ」

「………」

光の呼び掛けにも俯いたまま答えない。



扉を開け―――倉庫を去ってゆく




翔太と鈴が去った部屋は静かになった





「一体何したんだよ~」

「………」

何をした?分からない。

あんな顔をさせたいんじゃない。
もう傷付けないと決めた。

なのに………もう


「蓮司が女に逃げられるなんて珍しな~。いや、初だな初!」

「………」

もう…ダメなのか?



「祐煩せ~ぞ」

「何だよ光まで。鈴なら大丈夫だろ~が」

「は?何を根拠に」

「あの策士様なら明日も明後日も連れて来んだろ~が。あ~恐え~」





暗い雰囲気は翔太が戻って来るまで続いた。


翔太から聞いた鈴からの伝言

大丈夫と―――ごめん。

何であんな事言ったんだろう

私は黒龍の何を知ってるの?

でも、あの時はとっさに口から出た。
「黒龍は違う」と




ゆっくり走ってた翔太のバイクがアパートの前で止まった。


「本当は帰したくないからね」

バイクを降りる私に、溜め息混じりで話す

でも。違うよ――


「約束、ありがとう。でも大丈夫だよ。あれ以上居たら、言っちゃいけない事を言いそうだったから…。でももう落ち着いたし」

「…今日はもう外出ないでね。明日も迎え行くから」

私の目をしっかり見てるのは、たぶん真意を探ってる

「分かった。あ、蓮司に伝えて欲しいの―――――――」


次の日は土曜日。暴走の日


只今朝の8時
夏らしい暑く眩しい日差しをしている


翔太は何時に迎えに来るんだろう…
昨日聞き忘れてしまった。


「翔太計算してそうだから…暴走始まる夕方?……か、昼過ぎとかかな?」

勝手に結論づけた

そうと決まれば忙しい。
この天気だ。布団を干したいし、洗濯物も良く乾くだろう。


掃除に洗濯に買い物をし、昼を過ぎた頃に取りこみ始める

翔太のバイクが見えたのはその時


「翔太~すぐ行くから~」

手を振り返してくれた翔太を見てから作業を再開


作業は途中で外は炎天下。急がなきゃ

戸締まりだけはしっかりと。
準備済みの小さな鞄を持ち、慌てて翔太の元へ向かった。



慌ててたからかな?
なんで忘れたんだろうか―――






「よっ鈴。上行こうぜ」


倉庫の入り口には光が居た

満面の笑み
そして特効服姿


「光格好いい」

光の特効服姿は初めてじゃない。
でも以前の暴走は何にも見てなかった。

ワックスで逆立ててる、いつもの柔らかな金髪が勿体無い気がするが、白地金糸の特効服を見事に着こなしてる姿は凄く格好いい。


「何だよ今更」

照れた様に、それでも自慢げに笑う光はやっぱり可愛いかも


「上、颯斗さんも来てるぜ」

嬉しそうに教えてくれる。
いつもふわふわ揺れてる髪が今日は何だか寂しい。

今度柔らかな髪を触らせて。なんて言ったら怒るかな?




「鈴ちゃ~ん。久しぶり~~」

部屋に入るなり、あかりさんに抱きつかれた。
いや、飛びつかれた。かな?


「最近来てなかったの?今日も居ないから心配したんだよ~。あ、そうだ。下行こ!ね!颯斗達難しい話しててつまんないの~行こ~ね!」

いきなり起きた衝撃に。
ついていけない会話に。
強引に引っ張られる腕…


「あ、あかりさん。ちょっと待って下さい」


「ん?どした?」

「あかり。ちょっとぐらい良いだろ」

柔らかく笑う男の人。
この部屋で唯一知らない人だから、この人が颯斗さんだろう


「鈴ちゃん、で良いのかな?初めまして。2代目やってた颯斗です。話はあかりから聞いてたよ」

物腰の柔らかさに驚いた。
翔太以上に暴走族っぽくない。これで総長様だったなんて……



あ。挨拶


「藤林鈴です。初めまして」

「鈴ちゃ~ん、颯斗の見た目に黙らされちゃダメだからね~」

「…え?」

「何でもな~い。さ、下行こ」

ごゆっくり~なんて言いながら気になる発言を残し、扉を閉めてしまった