小さな鞄で戻って来た鈴ちゃんをバイクの後ろに乗せてアジトへ向かう
「じゃあ、合図は「帰る」の3文字ね。約束はちゃんと守から」
「うん」
「間違えて言わないようにね」
「大丈夫」
やっと漏れた小さな笑み。
アジトの前、バイクを止めて最終確認をする。
鈴ちゃんはまた緊張してる。
初めて連れてきた日を思い出すな……
「あ、ちょっと中入るの待ってね」
「え?」
「すぐだから」
扉を半開きにしたまま自分だけ中に入る
「「「ちわっす、翔太さん」」」
途端に凄い声が飛び交った
このまま鈴ちゃんを入れたら同じ事が起きてしまう。
「よく聞け。今から女を1人入れる。俺の客だからそのつもりで扱え」
俺のを強調する。
一瞬ざわつくが返事を確認してから鈴ちゃんを招き入れる
「「「………っ」」」
今度は固まるが、それも一瞬の事
次に起きたのは歓声
そして挨拶
だけど名前を口にする馬鹿は居ない。
「行こっか」
鈴ちゃんの腰に手を回して誘導する
ほんとに懐かしい
以前と違うのは
鈴ちゃんに「帰る」選択肢が有ること。
長く留まらせるのは俺次第、か…
たまり部屋に入ると蓮司が居ない
…………またか。
また喧嘩だ。
すぐに報告が上がってくるんだろう
「遅かったな。下の騒ぎはお前か?」
部屋には樹と光だけ
鈴ちゃんが来なくなってから気落ちしたまま静かになった光。
そんな光に替わり樹が訊いてくる
「ああ。連れてきた」
回してた手を引き寄せて部屋の中へ入れる
「鈴!!」
途端に反応した
「光。とりあえず鈴ちゃん座ろっか」
光を窘めてから鈴ちゃんを座らせる
無いとは思うが、逃げ出しそうな気がするのはやっぱり以前の記憶からだろう…
―――side*翔太。END
翔太に連れられて部屋に入ると直ぐに光が来た。
犬みたい。尻尾が見えそう…
なんて言ったら怒るよね
光達の変わらない態度
変わってない部屋
……あ、クーラーが動いてるのは始めて見るかも
「さてと。祐は蓮司の所で、蓮司はまた?」
「ああ」
相変わらず話が早い
「じゃあ居ない間に済ますか。鈴ちゃん」
「え?」
「此処に来なかったひと月の話なんだけど」
「…うん」
「部屋の電気が夜中の間ずっと点いてたとか」
「へ?」
…………何の話?
違う。何で知ってるの?
………あ。たしか
「尾けられてるとは聞いたけど……もう見張りじゃん」
そのうち買った物まで言い当てられそう。
呆れながら、それでも口を尖らして言う
「聞いたって誰に?」
「え?あ、優希に」
「ゆうき?あぁ一ノ瀬優希ね。黒龍と接触したっては聞いたけど。何もされなかった?」
「うん、大じょ「鈴あいつと会ってたのか?嫌な思いしなかったか?何であんな奴と「光」
「…………」
………翔太が怖い
「え~っと。平気だったよ?」
質問内容何だったっけ?
もう忘れちゃった。
「……何で黒龍と会ってたの?あいつも知り合い?」
「ううん。え~っと偶然かな?」
「ホントに平気だった?」
「うん。何ともないよ」
嫌な思いをしたのは優希の方。
私、勝手な事ばかりしちゃった
「あ!ごめん。黒龍に関わるなって言われて………た。よね」
「あ~~うん。まぁそれは良いんだけどね」
「ごめんなさい」
すっかり忘れてた。
『黒龍』って何か―――
「それはもう良いよ。話戻すけど、夜中に何かしてたの?」
う゛………
言わなきゃダメかな?
恥ずかし過ぎる。
だって――
「言わなきゃ、ダメ?」
「鈴ちゃん……その顔は反則」
うつむきながら尋ねた私に翔太は顔を逸らし、眼鏡を直しながら言う
反則?何の話?
「特に問題無いなら良いんだけど。急に毎夜点くようになったから気になって」
冷静を取り戻してる。
軽く咳払いし、眼鏡の奥の目を細めまた訊いてくる
「…………しくて」
「え?」
「寂しくて点けてたの!」
もう自棄だ。逆ギレだ。
「だって…此処が賑やかだから。家が静か過ぎて何か嫌で。ずっと……」
「じゃあまた毎日此処来いよ」
光を見上げる。
柔らかな金色の髪が綺麗に輝いて見える
「明日からまた迎え行くからさ。また毎日来りゃ良いじゃん」
「光。迎えは俺が行くから。明日も俺の連れとして此処に来て」
「え?明日も……なの?」
「嫌?明日も条件は同じで良いからさ。おいでよ」
………………泣きそう
胸が一杯で。
でも先に伝えたい
「ありがとっ」
「――あれっ?鈴じゃん」
いきなり開いた扉にいきなりの言葉。
現れたのは居なかった祐――
「おかえり。蓮司は?」
「……下でシャワー浴びてる」
翔太の声音が変わってる
「今日は?」
「あ~~問題ねぇだろ」
喧嘩の話?
蓮司がもう下まで来てるんだよね……
少し、怖かったりもする
「鈴久しぶりだなぁ~。あれっ、何か痩せてんな~」
「それ俺も思った」
「え?」
蓮司の事を考えてたら祐と光、2人から覗き込まれてた