俺は体育館の横扉から見ていたので、彼女の姿は見えなくなってしまった。
気になった俺は渡り廊下と繋がる入口側に移動してさらに様子を伺う。
彼女は冷たい廊下に膝をつき、自分のハンカチを出してその上に土のついたままの、たぶん根っこごとの花を優しくおいて、そっと包んだ。
それから立ち上がり荷物と傘を持ち、花を胸元にかかえて帰っていった…。
その一生懸命さと優しさに、『好きだ』って気持ちがあふれ出て、今まで関心のなかった恋愛に一気に目覚めた瞬間だった。
「竜、お前はさっきから練習
サボってなにしてんだよ?」
親友(悪友か?)でバスケ部仲間の中野真人(なかのまさと)が、俺の頭をはたきながら聞いてきた。
「マサ、俺…好きな人できた…
どうしよう、どうしたらいい?」
真人に向き直ると肩にガシッとつかみかかり、揺すりながら聞いた。
「えっ?誰っ!?マジ!?」
すると反対にものすごい勢いで聞き返されてしまった。
…*…*…*…*…*…*…
あれから、教室内でも彼女が気になり、話しかけようとはするが、何を話そうかな、なんて思ううちに休み時間が終わってしまったり、部活の時間になってしまったり…