ニヤリとしながら言われて嫌な汗が流れたが、『大丈夫…竜やみんながいてくれる、お兄ちゃんもいる』と、まるで呪文のように心で繰り返しながら、後藤を睨み付けた。
「咲希はお前には用はないし、
話すこともない。
バスケの試合しにきてんだろ?
俺の咲希に手を出すな…」
いつもより低く、感情を抑え込もうとしてるのか、抑揚もなかった。
いつの間か、竜と中野君の後ろには光理の選手と兄を先頭に清真の選手がいて、中庭は珍しく人が一杯だった。
「今は休憩時間だろ?
声かけるのが、そんなに
いけないことか?」
しれっと言い返してくる後藤。
ただ、白枝の他の選手は、「やめとけ」「お前も諦めろ」などと後藤に向かって言いながら後退りしている。
「はっ、ざまぁねぇな…
お仲間からも見放されて…
お前みたいに人の気持ちを考えないで
力だけで何でもうまく
いくと思ってるやつは
ひとが離れてくんだよっ!!」
今度は兄が後藤に呆れたって感じでいい放つ。
「……お前も、関係ないだろ…
いい加減に咲希ちゃんと二人にしてくれよ、
みんな、邪魔すんなよ、
羨ましいからって…」
そんなことを平然と言う。
バスケットは上手なのかもしれないが、人としてなんだか可哀想に思ってしまった。