「そうだったんですね…
もう、私は大丈夫なので、桜井君も
気にしないで下さいね。
そして、ありがとう…」
兄から認めてもらってからは、桜井君は駅まででなく、そこから4、5分の私の家まで、送ってくれるようになっていた。
今日も家の前までくると、桜井君は少しモジモジっと、何か言いたそうにしている。
「桜井君?」
「あの、さ…
出来たらでいいんだけど、いや、
出来たらそうしてほしいんだけど…
俺のこと、さぁ?
名前で…呼んでもらえないかなぁ…
竜…か、竜斗って…
あ、あとな?
お兄さんと話してる時みたいに…
敬語なしで、話して欲しいんだ
ダメかなぁ…」
話す桜井君をじぃ~っと見つめてしまった。
そして、言われたことを頭と心で理解するのに少し、時間をもらう…。
桜井君は、急かさずにちゃんと待ってくれる。
こんなに優しい人にお願いされて、望みを叶えて喜んでほしいと思わない訳がない。
私は決心した。
「は、ぃ…あの、敬語は、
急には無理なの…あ、
無理だか、ら…ゆっくりになり、
あ、なるけど、いいかな?」
何度も言い直す私をおかしそうにでも、いとおしそうにみてくれて、頷いてくれた。
「ありがとう…り、竜………くん…」