「それで?咲希が許したから、
俺に謝ったから、チャラか?
ふざけんなよ…あの瞬間…
咲希がどんな気持ちになったと
思ってんだ…俺は認めないから…
咲希、帰るぞ…」


そう、言い終わると私の腕をとり、歩き出した。


「キャッ…」


いきなり引かれて体の向きも変わったため、足が突っかかり…転びそうになる。


「咲希っ!」


桜井君がとっさに後ろから腰に腕を回して支えてくれた。


「あ、ありがとう…」


直ぐに振り返った兄は私を奪うように肩から抱き寄せ、もう一度「行くぞっ」と言ってさっさと歩き出した。


私は何も言えず、振り返るのもままならず兄に引きずられた。


「咲希っ、連絡するから!」


後ろから桜井君が周りの目を気にしないで言ってくれた。


それを聞きながら頬に一筋…涙が落ちた…


…*…*…*…*…*…*…


「ひ、酷いっ、よっ…
うぅ…ぅぅ…」


声をこらえながら止まることのない涙を流し、それを乱暴に拭い続ける。


「止めろっ…そんなにこするな…」


「い、やっ…だ、て
とま…な、い…よ…ぅぅ~」


兄が私の手を取って目をこすらないようにおさえつけた。


「そんなに泣くなよ…」


兄が苦しそうな声で呟いた…