体育館に背中を向け、以前、桜井君が気にしてくれたパンジーを見て、いつの間にか呟いていた。
「ねぇ…私ね、桜井竜斗君が好きなの……
勇気を出して…付き合ってくださ、い…
なんて…言えたら…ね…はぁ…」
小さな声だが、思わず出でしまった心の呟きを、人に聞かれていたなんて…
しかも、本人に…
…*…*…*…*…*…*…
そして冒頭の返事。
目の前に来た桜井君は私を見下ろしながらニコニコして、大きな手のひらで私の両手を包み込んだ。
私は有り得ないほどの鼓動の速さと戦いながら、ただ、彼を見上げるだけ…。
「今日からカレカノってことね?
俺、すげぇ嬉しいなぁ…
あっ、じゃあ、部活行ってくる、
星谷さん、また、明日ね♪」
どうにか小さく私が頷いたのを見ると、少し照れたような、はにかんだ笑顔を残し、彼は体育館に走って戻っていった。
…*…*…*…*…*…*…
何が…起きたの???
私が、桜井君の、彼女…?
あまりの衝撃に立ち尽くしていると、体育館からダダダッと足音がして、また、目の前に桜井君。
そして、手に持つ携帯を少し掲げながら、息を整えて優しい声で言ってくれる。
「連絡先、彼氏なのに知らないとか
バカだろって、真人(まさと)に
言われてさ。
教えて?」