私が焦るなか、兄以外のみんなの動きが止まった…。


そして…


「お、にぃ…ちゃん?」


「お前ら、咲希泣かせて…
何が言いてぇんだよっ!!」


「あ、やっ…え?…」


“ふざけんな”と言った人も、中野君も、周りのバスケ部員と思われる人達も、呆気にとられて、そして、焦りだした。


「うわぁ…マジか…
星谷さん、ごめんっ!
俺らの完全な勘違いだ…
いや、お兄ちゃんだったとは…」


そこまで聞いて勘のいい兄は状況を理解したらしい。


「はぁん…俺と咲希を見て
咲希が浮気でもしてると…
お前らの大事な大事な仲間を
バカにされたと…思った訳だ
で、いきなり女に向かってこんなとこで
怒鳴り付けるんだな…
………お前らサイテ~だな…」


そこまで聞いていて、やっと私も何が起きたのか理解した。


いきなり人に怒鳴られるなんて経験は、皆無に等しく、衝撃で、さらには“浮気”などと思われたらしいことがショックで、シャツを掴んでいた手は下に下がり、兄の背中に寄りかかってしまった。


私を倒さないように、振り向きながら肩を支えてくれて、歩き出す兄。


私はバスケ部員のみなさんにほんの少し頭を下げて、兄に連れられて歩き出した。