次々と口の中に消えていく。
『あぁ、よかったぁ』
勢いのある食べっぷりを無意識にニコニコしながら見ていた…。
「あ~、美味かったぁ~
ごちそうさま♪
もしかして、これ、星谷さん手作り?」
あっという間に、女子用の小さなお弁当箱は空になり、私の手元に戻ってきた。
「はいっ…お弁当は毎日…
自分で作ってて…」
「へぇ~、なんかいいなぁ
俺もまた、食べたいなぁ
すっごい美味しかったからさぁ」
私の大好きな優しい笑顔で、そんな嬉しいことをいってくれるなんて。
「あ、あの…こうゆうので
よければ、また、つ、作り、ます…」
今度は顔をみて言えた。
「ほんとっ?本気にするよ?」
笑顔で、重ねて聞かれたので、もちろん…縦に首を振る。
「えっ、じゃあさ、明日、
俺の弁当箱渡すから、
次の日からお願いしていい?
で、ここで、一緒に食おう?」
「はい…」
そう答えるのが、精一杯だった。
心は喜びと興奮と不安でごちゃごちゃだった。
チャイムが鳴り出したので、教室へ戻ることにした。
校舎に入るとまた、ジロジロと見られたりコソコソされたり…さっきの『不釣り合い』も思い出してしまった。
でも、たった2、30分の二人の時間が心に変化をもたらしたのか、桜井君との歩く距離が、三歩くらいあったのが、二歩くらいに縮まった、気がした…。