「ありゃ…俺、ヤバかったか…?」
中野君がなにか言ってたが、よく聞こえなかった…。
それよりも、泣いてしまったことは桜井君のせいではないと、ちゃんと言わなきゃいけないって、そればかりが今は頭を埋めていて…
「ち、ちが…さくら、い…く、ん
ごめ…な、さぃ…」
桜井君は、どうにも出来なくて俯く私を「とりあえずここから出よう」と、優しく言いながら腕を引き上げてくれた。
…*…*…*…*…*…*…
桜井君に引かれたまま、お弁当をフラフラさせて無言で歩く。
中野君はついてこなかった。
体育館の裏側の人の居ないところまでくると、桜井君は「はぁ~っ…」と大きくため息をつき、私を離してしゃがみこんだ。
『あぁ…桜井君を困らせた、怒らせた、嫌われた…』
ジリジリと後ずさりしていく。
“ジャリジャリ…”足下からの音がやけに辺りに響いて、桜井君がそれに気がつき私を見た。
「えっ?どこいくの?
ここに座ってよ。
……話し、しよう?」
その顔は怒ってなくて呆れてなくて…少し疲れた感じに見えたが、優しく、“大丈夫”といってるように思えた。
だから、私は安心感をおぼえ、引き寄せられるように、桜井君の横に腰を下ろした。