「竜斗っ!ダメだよ、勝手に
離れたら…何があったの?」


「清水…ヤバイ、咲希が…
まだ熱が8度あるのに、
兄貴の目を盗んで家を出たって…」


「そんなっ!?咲希のやつぅ~
で、でも竜斗は探し回ったらダメだから!!」


なんとか止めて、あたしと1年数名で会場周辺を探す。


しばらくするとタクシーからフラフラで降りてきた咲希が…。


「バカ咲希っ!!
あんた、何してんのよぉ~
心配するでしょうがぁ!!」


駆け寄り支えながら館内に入り、1年には先に竜斗に知らせに走らせた。


「咲希っ…」


知らせを受けた竜斗が控え室代わりの三階席に続く階段から飛び出てきた。


そして、咲希を思いきり抱きしめた。


「バカっ…何してんだよ…」


こもった力のない声で呟く。


咲希は抱きしめられたまま、力が入らないのか竜斗に寄りかかって…それでも、いつまでもそうしていられないとわかっているからかモゾモゾしだした。


「竜…きょう、のゴール、数
いつ、もより、すくない…って…?」


そして、苦しそうな、でもなぜかよく通る声で話しかけてる。


「咲希…だから、来たのか…?」


「そう…だ、よ、竜は…
甘えちゃ、だめ…
次、ちゃんと、みて、る…から」


そう言うとあたしの方を見るから、駆け寄り咲希を抱え込んだ。