甘いmilkchocolate~嫌いなアイツ~







「後2キロだ!」

船に乗っている先生が
スピーカーホンで叫ぶ

・・・ほんと
先生はずるい・・・

船に乗るなんて・・・

ハァ・・・・・・でも私も
何か頭がクラクラしてきちゃった・・・

眠い・・・
こんな時に眠たくなってしまった

ダメダメ――!
しっかりしないと!!

泳いでる真っ最中なんだから!

でももうみえこの頭の中には
意識が朦朧としていくのであった




―――――もうダメ



「きゃあ!!先生!叶内さんが!」










「・・・・・ん」


重たい目をゆっくり
開けて見ると見たことのない
景色だった

私・・・泳いでたはずだよね

海の中じゃないし私濡れてない

「あら。やっと起きたのね」

そこにいたのは
保健の先生だった

「先生・・・私、なんで」

「覚えてないの?
あなた海の中で寝てしまったのよ?」

フフと笑う先生

そうだったのか・・・

でも
なんで・・・

「フフフ
堺君が助けてくれたのよ」

堺―――?

なんで・・・

クラスも違うのにどうやって
助けれたんだ?

「クラスも違うのに愛の力かしら」

キャー
と騒ぐ先生









堺に助けてもらった・・・

また礼を言わなきゃな
本当に堺は不思議な奴だ

ドドドドン!!!

「きゃあああ!!」

窓から空を見ると雨が強く
降っていた

「今日は朝から天気悪かったからねぇ

ごめんね・・・先生お仕事あるから
叶内さんはここで寝ててね」

え・・・今なんて・・・

「また戻ってくるから」

待って!先生
ヤダ!1人にしないで!!

パタン

先生は行ってしまい
1人ぼっちになってしまった私

途端急に手が震えてきた

ドドド

バリバリ

ドドドドン―――!!
ピカッ!!

「クッ!!」

私は雷の音が聞こえないように
耳を強く抑える

ドドドドドドン!!!
バリバリバリ!!!


よりによって何で―――



























第8章「嵐の日に」


























私がまだ幼い時だった

雨が強く振り
雷が鳴り止まなかった

バシッ―――!!

「何で俺の言うことが聞けない!!」

「あ!あなた止めて!!
せめて子供の前だけはやめてください!」

バシン!!

「うるさい!!お前が悪いんだ!!!」

あの日まだ父はいた

お母さんがお金をお父さんに
貸さなかったせいで何度も
ビンタを喰らわれていた

バシ

バシン!!!

目の前でお母さんを殴っている
お父さんは衝撃的だった

怖い
怖い

お父さんが怖い

まだ幼い私は恐怖心が
心の中に強く刻まれた

狂っていた








恐怖心の中
お母さんを助けたいあまり
お父さんの方にいった

「お父さん!!止めて!!
お母さんを叩かないで―――!!」

涙をいっぱい流せ
ぐちゃぐちゃの顔で勇気を振り絞って
お父さんに言う

私に気づいたお父さんは
こっちをにらめつけお母さんを
叩く手が止まった

それに安堵した私はまだ
わからなかった

「・・・お父さん?」

「げて!!!みえこ!!お願い!」

お父さんがゆっくりこっちに
向かってきた

「みえこ!!」

分からなかった
この状態がなんなのか

そんなの当たり前だ
空気を読める歳じゃなかったから

ただお母さんを助けたかった
だけだから

「逃げて!!!」

お母さんが泣いて何度も私に
叫んでいたなんて知る由もなかった










「なんだ・・・小僧
お前も母さんの見方か」

そう言ってお父さんはあの
大きな手を振りかざしていた

バチン!!!!

その時大きな音が部屋に広がった

分からない
今何が起こったのか

気がつけば私はあんだけお父さんの
近くにいたのにお父さんとの
距離が遠くなっていた

殴られたのだった

こんな小さな子供相手に
本気で殴った私のほっぺは
赤く腫れ上がり口の先の部分が
切れて血が流れていた

「う・・・うえーん!うっ、・・・」

あまりの痛さに泣き崩れる私に
お父さんは私の手首をもって
何処かへ連れて行かれた


「ここで頭冷やせクソガキが!」

連れて行かれた先は外だった

雨が強く振り
雷が鳴り止まない

鍵を閉められひとりぼっち
にされた私だった







「お父さん・・・!!!!
ここ開けて!お願い!!」

強く降ってくる雨は
小さな体を濡らしていた

そんな中
雷が光り大きな音で
鳴り響く

「きゃああ!!」

その時の雷の影響はすごかった

1人ぼっちの孤独と
誰も守ってくれない悲しさ

寒い・・・

小さな体を小さな手で抱きしめ
震えながら1人で守るように

助けて・・・
お願い

誰か・・・

1人じゃ嫌だ―――

怖い
怖いよ・・・

「うわぁぁぁぁぁん!!!」

耐え切れなくなり泣いた
息が出来なくなるまで泣いた

涙かも雨かも分からないぐらい

どうしたらいいの?
私、どうしたら家に入らしてくれる?

雷の大きな音でさらに大きな
不安を抱いた

このまま死んじゃうんじゃないか


誰も
助けてくれないんじゃないかって








その時ドアが開いた

「お母さん・・・」

声になならない声で助けを求めた

お母さんはとても悲しそうに
寂しそうな目で私を見た

お母さんも顔が腫れ上がり
体にたくさんのアザができていた

「・・・ごめんね・・・・
ごめんなさい・・・ごめん」

私を抱き寄せ
何度も何度も謝ってきた

お母さんもこの時泣いていたんだろう

お母さんは悪くないのに
何で謝らなくちゃいけないの?

なんであの人のために
お母さんが耐えなくちゃいけないの?

小さな子供には疑問しか
浮かばなかった




あれから私は雷が嫌いになっていた
この時を思い出してしまうから

しっかりと明確に
1人じゃ不安になってしまう
どうしようもなくなって
怖くなるんだ