「なぁ、さっきの子って……?」
再び帰り道を歩き出して少し経ったくらいに、私は聞いてみた。
「ああ……、1コ下みたいなんだけど最近ずっと付きまとわれててウンザリしてる」
心底疲れた、といった表情で克幸が呟く。
「女子校のお嬢様なんだか知らないけど、自己中で周りの事を気にもしない」
初めの彼女は克幸の行くところに現れては、一番前を陣取って騒ぐだけだったのだけど。
「気が付くと、どこから入ったのかタオルを持って待ってたり、待ち伏せされたりしてて……」
そっか。最近、特に先生達が警戒してたのはそういう理由もあったのか。
「何か、ストーカーみたいだな」
私が苦笑しながらそう言うと、横目でジロリとにらまれる。
「他人事だと思ってるだろ」
「えっ?いや、そ、そんな事ないよ!」
そこでふと、克幸が目を伏せる。
「……悪い。出来るだけさおには、迷惑かけないようにしたかったんだけどな」
あの感じだと、私にも何か言ってくるかもしれないとアイツは言った。
けれど私はそんな心配をよそに、大丈夫だよ!と笑い飛ばした。