「その子が伊波くんの彼女なのっ?」
恥ずかしさからうつむき気味で歩いていた私には、突然前をさえぎった彼女の足元が目に入る。
「ん?」
顔を上げると、ゆるくウェーブがかった髪を二つに分けた髪型の女の子が立っていた。
「アンタ……」
克幸の呆れた様な声。
彼女は私を値踏みするように見ると、眉を寄せる。
「ホントにいたんだ……」
「悪いけど、嘘でそんな事は言わない」
「それでも、私は伊波くんが好きなの!」
彼女の着ている制服は、少し遠くの女子校のものだ。
確か旭が可愛い制服だっていってた所のだよな。
ブラウスの襟元に結ばれたリボンといい、細かいプリーツの入ったスカートといい、確かに可愛い。
ポカンと彼女を見ていると、目が合ってキッとにらまれた。
「この子より私の方がいいって証明してみせるんだから!」
そう宣言すると、彼女は逃げるようにその場から走り去る。
「……はぁ」
女の子の姿が見えなくなった後、克幸が盛大なため息をついた。
台風の様に訪れて去っていった彼女に、私は訳もわからず目を瞬かせるのが精一杯だった。