そして事件は、早速起きた。
その日の放課後は、何だか克幸と帰りたくなってしまって、私はアイツの部活が終わるのを待っていた。
「アキラが気を付けろなんて言うから……意味なく不安になるよなぁ」
校庭の隅でぼやいていると、頭の上からよく知った声が聞こえた。
「何が不安なんだ?」
すっかり油断していた私は、その声にビクッと反応してしまう。
「―――か、克幸!ビックリした……」
「だから、何が不安なんだ?」
「あ!いや、それは何でもない……。それより帰ろう!」
私は慌てて立ち上がると、スカートの汚れをはたいてカバンをつかんだ。
「さおと帰るの、久々な気がするな」
「そうだな。最近、別行動とってたし」
「今日は結構遅くなったから、あの集団も帰ったみたいで良かった」
他校の見学者達は、日が落ちる前に危ないからと先生達に追い払われていたっけ。
克幸は私を見て嬉しそうに笑うと、手をつないできた。
「か、克幸」
「これも久々だな」
「……うん、まぁ」
もう1年くらい経つのに思わず照れるなんて、変なんだろうか。
いつまで経っても幼なじみの感覚が抜けない。