「ねぇ、あかねちゃん」



じゃあ行こうか、となるはずのタイミングで山本はいきなり渋い顔で私を見た。



「なに? 行かないの?」

「可愛いね」

「な……」



いきなり言い出すんだ!


突然の誉め言葉に、私はすぐ口を開けなかった。



「いつもと全然雰囲気違う」

「……せ、制服じゃないからでしょ」



私が最もらしいことを言えば、山本は「ああ、そうか」とすぐに納得した。なんとも単純だ。



「でも、可愛いよ。その服」

「わ、わかったから、早く行こうよ」

「だな。じゃあ行こう!」



無駄に元気のよい掛け声に、私は「はいはい」と返事をして、山本の隣を歩く。


「可愛い」なんて言われなれていないせいか、少し頬が熱かった。