確かに山本は男だから、「男と出掛ける」という部分は事実だ。しかもふたりきり。
でも……。
デートじゃない! 断じて違う!
ただのお礼、そうだ。それだけ。
「そんなんじゃないから!」
何故か必死になっていた私は、つい大きな声を出してしまった。
そんな不自然な反応に弟が食い付くのも当たり前で、さっきよりもあからさまなニヤニヤ顔でこちらを見てくる。
「そっかそっか、わかったよ。まぁ、せいぜい頑張れ。
あ、結構似合ってるよ、その服」
これは、なにもわかってない!
私は「それはどうも!」と言い捨てて、リビングから飛び出すと、階段を駆け上がった。
ちょうど2階に居た母に「あんまりうるさくしないのよ」と注意されたが、それに返事はしなかった。