「ほら、ギターの……崇文君、でしたね。
彼が、先週持ってきてくれたんです」
「あいつが……?」
「もう、1ヶ月も入院しているんですけど。
深音が、崇文君以外には知らせるなって言うものですから」
1ヶ月。
ちょうど、メジャーの話が出た後だ。
それで、沈んでいたのか。
“Dear you”の出来を気にしていたのも。
いきなり、練習を録音したいなんて言い出したのも。
崇文だけは、知っていたから。
録音して、届けようとしたのか。
「すごく喜んでいました。
これ……貴方が歌ってるんですってね。
私には聞かせてくれないけど」
「……」
何と返していいかわからず、深音の顔を見ると。
その顔の横に、プレーヤーの下敷きになるように、見覚えのあるファイルがあった。
「……あ……」
それは、陸のポケットアルバムだった。