片桐 芽維(カタギリ メイ)は、9時にバイトを終え、家路を急いでいた。

だが、いつもと街の様子が違った。
街が不気味なほどに静まり返っていた。この時間とはいえど、テレビの音ぐらい聞こえてもいいはずであるが、それすら確認できなかった。

いつもうるさく鳴いている犬も、今日は静かだ。


虫の足音すら聞こえないぐらいである。


そんな街の様子に何度か首を傾げながら、早足で自宅へ向かう。
そして、芽維の足は5歩ほどですぐに止まった。

突如、耳鳴りが芽維を襲う。
きいんと金属音のような甲高い音が耳を支配する。


痛い。痛い。


痛みの中で、うっすらと、確認できるかできないかぐらいの音量で何かが聞こえる。



何だ?