「殿…。」


 木材の格子がかった近くからチラチラと仄白く松明の炎が声の主を照らした。


 「濃…。」



 「殿…よくご無事で…!?」



 お濃は“影”もとい殿という人物に跪いた。



 「他の者も無事か‥!」



 濃と共にきた僧や忍びの者達が奥に跪き一礼する。


 「ここは‥一体どこでありましょう。」


 濃は不安気に眉間に皺をよせて殿に尋ねた。


 「まだ…わからぬ!
 京の都であるかすらも…ただ…先ほど穴の向こうに空が見えた。

 外には…抜けられるやもしれぬ…。」


 殿の言葉に濃は、安堵の息をついた。


 「南蛮の師達よりもちこまれた…魔王の法書より殿の命通り施しを行いました。」



 「そうかっ!?
 どの様なものだった!?」



 濃の言葉に殿は笑みを浮かべて喜んだのを見てその場にいた者達も笑みを浮かべた。


 「雷鳴轟きまさに龍神が天よりおいでになられた後…魔王の法書に描かれた陣を描くと同時に激しい爆風巻き起こりいかづちの如くこちらに舞い降りました。」