「……くぅっ…。」


 顔を振り払い泥水を拭う。



 ぬかるんだ土に手をうずめ腕に全身の力を込めて身を起こした。



 「ふっー。」



 身を起こし一息ついた後…周囲を見回した。


 ザアァァァァ…。


 上空から大粒の雨が降り注ぎ地下の地面に叩きつけた。


 ゆっくりと雨の降る奥を見上げたその先に…まるで満月の月のように丸く弧を描いた穴がぽっかりと口を開いているのが確認できた。


 出口をみつけてはやる気持ちを抑えて何か掴む物を手探りで探し四角い固い箱に手があたった。


 ゆっくりその箱を近づけようとしても…箱の中身が重く簡単に動く気配がないことを感じてその箱を頼りにゆっくりとその箱の上に座った後壁に手をつき立ち上がった。


 再度…あの穴の近くに立つ。


 座ったまま感じた状況とはまた違い外の空気を更に感じ穴の向こうからも数名の声が聞こえてきた。


 奇跡だ…。



 穴の向こう側に雨雲の空が広がる。


 これを奇跡としてなんというべきか言葉に出来ずに眺めた。

 「…殿…。」


 どこからともなく聞こえた声に気づきその人物はゆっくり近づいた。


 「何者だ…。」


 声がした方向にゆっくりと近づき歩むと微かに大松の炎が揺れていた。