御家来衆の視線が一斉に釘付けとなり…私は赤面した。



 「殿…。
 おろして下さいまし…。」


 小声で訴えるも殿は…真剣な面持ちで返した。


 「このままでよい…。
 誰がなんと言おうとわしの決めた正室だ…!」


 言い出したら成し遂げるまで引かない性分なのは…百も承知なだけに私の言い分をはねのけて殿は御家来衆に宣言した。


 「私にも物申したい議がございまする!」


 殿に圧倒されていた御家来衆達を後目に‥発言した声の主に一斉に視線が注がれた。



 「…濃…。」



 正室として美濃の地より輿入れされた御台所…濃姫は堂々たる態度で立ちはだかった。



 「なんじゃ…申してみよ…!」



 殿は相変わらず手厳しく濃姫に言い放つと…濃姫は魅惑的な笑みを口元に浮かべて言葉を続けた。


 「…いくら生駒のねえ様が大事と申されましても…ねえ様は、今…病に臥しておられる身なのですから逆に気を遣わせて病が重くなられたらどうなさいます?
もし‥それで重くなったとなっては‥この濃が‥殿を恨みまする!」