「皆の者‥。

 この者が生駒の吉乃だ…。

 織田家の世継ぎである‥。
 嫡子 奇妙丸〈キミョウマル〉(後の信忠)‥。
 次男 茶筅丸‥。〈チャセンマル〉(後の信雄)
 三子女 於徳〈オトク〉(後の徳姫)
3子の生母である…。

 誰が何と言おうともこの信長の正式な正室として…小牧城に吉乃を迎え入れる故‥正室として計らい仕えるように‥。

 何か意を唱える者はおるか!
 おるなら今の内に聞くが‥?」


 真剣な眼差しで睨み力強く言葉を放った殿を見上げて、殿の一遍の曇りのない精悍な表情に魅入られた。


 出会った頃のあの幼かった殿は…今こんなにも大きく逞しくなられた事に喜びを感じ…殿が私を正室にしたいと本気で思っていてくれた心遣いがただ嬉しかった。


 殿と私の仲を心よく思わぬ者も御家来衆の中には…いるというのを前々から知っていたのもあり、それを理由に私が殿の城で暮らす事を拒んでいた事もあったせいか殿は御家来衆に意見を仰いだ。