殿は私を抱き止めたまま廊下を歩きやがて…ある部屋の前で足を止めて再び見下ろされました。



 「もう少しの辛抱じゃ…。」


 「お気遣いありがとうございます。
 こうして殿の腕に抱かれてるだけで…私…幸せでございますわ…。」


 執拗に気遣う殿に笑顔を浮かべお礼を述べた私を見下ろした殿は何か意を決したように思いを告げた


 「長く待たせてすまぬ…。」


 私の顔色が優れないせいか…自責の念に駆られ苦潰した表情を見せまいと私に口づけた。


 殿の悔しげな思いが唇から伝わってきて心が痛んだ。


 「殿…。」


 心配そうに顔を覗く様子を察し…私の鼻をつまむと目を細めて悪戯に笑ってみせた。


 その笑顔に私も微笑み返す…。


 「さあ…。
 参ろうか…。」


 殿の悪戯な笑みに安心してゆっくり頷き殿の胸に顔をうずめた。

 目の前の扉へと進み殿はそのまま躊躇もなく私を抱きかかえられ部屋の中へと歩みを進めた。



 ずらりと並ぶ御家来衆が部屋の中を埋め尽くしているのが腕の中から見え私は思わず喉を鳴らした…。

 私を抱き抱えたまま御家来衆の間を進み…やがて部屋の上座へとやってくるとそのまま踵を返し周りを見回した。


 私は殿の腕の中で御家来衆を見下ろしながら…集まった御家来衆達を眺めた。