「殿…?」


 私の身体をシッカリと両腕に抱き抱え殿は…私を建物の中へと連れだった。


 見下ろされたその表情は…いつもより険しくそして寂しそうに映った。



 「吉乃…。
 ここが…そなたが今日から住む城じゃ…。」


 歩きながら見下ろしたその険しい表情に寂しそうな笑みを浮かべた。



 「住む…?」



 何の事やらわからず尋ねた言葉に殿は頷き言葉を返した。


 「そう…。
 城が…そなたとわしの城が完成したんじゃ…。」




 私と殿の城…?


 殿の言葉にますますよくわからずにいた私に無言で頷いた。


 「何をおっしゃいます。
 生駒の屋敷がございましょう…。」



 あどけない笑みを浮かべいつものように城行きを断った私を見た苦笑を浮かべた。


 「生駒の屋敷でも申したがこれは…命令なるぞ!!
 もう生駒の屋敷には帰さぬ!?」


いつもの殿のわがままに私は愛おしさがまし目を細めて笑った様子を見た殿は…再び切なげに私を見つめた。


 「身体の方苦しくはないか…?

 もし体勢がきついのならば…わしにしっかり捕まっておれ。」


 殿の優しい言葉に…私は至福のひと時を感じゆっくり頷いた後…殿の首に手を回し鍛えた胸板に頬を寄せて身を任せた。