“えっ‥。”


 その触れた感触に私は…思わず濃姫をじっと見つめた。


 濃姫は、口元に魅惑的な意味深な笑みを浮かべると細めた黒い瞳の奥を光らせた。


 「じゃあ‥今からホテルの駐車場まで案内します。」


 権田教授の言葉に‥ハッと我に返って頷くと濃姫を再び見つめた。


 「濃姫様‥。
 参りましょう‥!?」


 「ええ‥。」


 濃姫様は嬉しそうに頷きそして…握り締めた私の手をゆっくりと下ろして解き放した。



 “今…一瞬胸の膨らみを感じなかったように思えたんだけど…。”


 違和感を覚えた感触に‥手の平を何度も返しては指先を見つめた。


 「さあ…。
 参りましょう。」


 そんな様子を見ながら…なおも意味深な笑みを浮かべ濃姫は一礼して立ち上がった。

 その様子に私は気のせいか…と思い直し濃姫の後に続いて立ち上がった。



 やがて…私達は濃姫様を連れ部屋を後にすると…最初に案内された場所へと移動した。


「姉ちゃん!?」


部屋の扉を開けるなり、まず最初に私の姿を見つけた諷馬が声をあげたのに、その場にいた者が全員…美しい濃姫に釘付けとなった。