ふてくされた顔で頷いた男に対し笑顔で注意した家康似の男とのやりとりで…彼が娘の弟だという事を知った。

 やがて2人はその場を後にし、娘の弟は四輪の荷車に乗り込んでいったのを確認した。


 細心の注意を払いトラックの下から這い出ると、ひとまず四輪の車の間に身を潜めた。


 辺りに静けさが戻り朝日を待つように少し明るくなってきた空を幾度となく旋回しながら飛び回っているのを見つけ、指笛で呼び寄せると一羽だけ真っ直ぐに降り立ち殿の腕にとまった。


 鳥の足についた文をほどきひとまず空に放つ。


 文を急いで開き…その文が濃からの文であることを確認した。


 文には短い文章であったが…戸塚教授が本能寺に現れ…昨日殿が大学に連絡をくれた事を聞きホッとした事と…吉乃の夢をみる娘の話を聞いたとしたためられていた。


 殿が送った文とは行き違いになった事を知りつつも…吉乃の夢をみる娘という文面にあの娘が頭に浮かび身をひそめながら娘が乗り込んだ車へと近付いた。