「んんっ…。」


 どれくらい時を経たのか時間さえもわからぬまま気を失っていたが…眠りから覚め起き上がり頭をさすった。


 辺りを見回し鳥の囀りと差し込む薄明かりの光に、もう直ぐ夜明け近くなんだと思いゆっくり扉に近付いた。


 生憎トラックは休憩の為とまっていたこともあり…ホッと一息ついた時…。
 また背後で声がして鍵穴程の穴から覗くと…家康似の男と吉乃似の娘の話す声に耳をすました。


 吉乃似の娘は…何やら夢の話を懸命に家康似の男に話していた内容に耳を疑った。
 吉乃とその兄八右衛門と殿の三人しか知らぬ祝言の話を…懐かしげに話す娘をすぐにでもこの場所をでて、なりふり構わず抱きしめたいという思いに駆り立てられました。


 “紛れもなくこの娘は…吉乃の生まれ変わりだ!”


 天にも昇る心地でいた殿の目に次の瞬間我が目を疑った。


 家康似の男が事もあろうに生まれ変わりの娘の耳に口をつげた光景が目の中に飛び込んできて思わず殿は握った拳をこめ扉に殴られました。


 鈍く低い音が外にも伝わり扉を開ける音に慌てて積み荷の影に隠れた。


 開かれた扉の向こうから朝の匂いが広がると…やがて中を用心深く見回した後扉を閉めてその場を離れた様子に荷物の影からホッと安堵の吐息をもらした。