「名は…?
 お主は…?」


 殿はこの時を逃せば再び会うのは困難に感じられ“行かないでくれ”と言葉を続けようとしましたが優しい笑顔を向けられ殿を残して走り去る後ろ姿を追いかけようとした時、休憩を終えたドライバーの柴田が声に阻まれて娘は闇夜に姿を消され見失いました。


 「これ…やる!」


 先程購入した二つの飲み物をドライバーの柴田に渡した。


 「ええのか!

 有り難く頂くわー!」


 ドライバーの柴田は暖かい飲み物の差し入れに喜び…二人並んでトラックへと歩みを進めた。



 「さあてっと…。」


 カプチーノを飲み終えたドライバーの柴田に殿は飲み物を一気に飲み干した。

 口の中に甘い風味が広がり苦みが後から広がった。


 「変わった飲み物だな。」


 「カプチーノや…!
 なんや口に泡ついとるで!」


 ドライバーの柴田に笑われ口についた泡を拭き取りながら…飲み干したカップの中をみた。


 先程の娘の笑顔と声が…まだ胸に焼き付いたまま離れなかった。


 「さあっ…!
 出発やな…!」


 ドライバーの柴田がトラックの脇についている紐を伸ばし意気込んだ。