しんみりとした会話を交わしながら過ぎゆく鏡のような透明の窓の景色を眺めて殿は呟かれました。
「もう…今はいない…。
死んだ…。
病をずっと患っておってのう…。
病であった事に気付いた時は…もう動く事すらままならなかった。
女の体を焼き小牧城に墓を建てた。
最後も看取れず駆けつけたわしに…安らかな笑みを浮かべ眠っているみたいだった。」
移り変わる景色に目を細めて愛しき女の事を語った。
「なんや…。
泣けてくるわ…!
よし!!
品川ついたら…名古屋行きの品物がないか聞いて積み荷積んだら…名古屋まで俺が連れていってやるさかいな!」
ドライバーの柴田は…殿の話に涙を浮かべ殿に向かって拳をみせて誓った。
「よろしく頼む…。」
ドライバーの柴田は…殿の言葉に頷き一礼し再び…風をきり移り変わる景色の向こう側に思いをはせた。
“天下布武”と唱えた俺の夢を傍らで見守ってくれた愛しい女 吉乃‥。
病で心細い日だってあった筈なのに…床に臥しても帰ればあの笑顔で「今度はどなた様と喧嘩をなさったの?」といつでも子供扱いだった。