先程みた四輪の荷車をグングン追い抜き、やがて途中パーキングで休憩を取りながら関東は品川までの道をひたすら走る。
 やがて日頃の疲れからかうたた寝をつく間に名古屋をすぎ静岡にさしかかった頃目をさまされました。


 「んんっ…!」


 「おおっ…!
 起きたか?
 今、名古屋をすぎたとこやで…!」


 「何っ…!?
 名古屋と申したか?」


 オウム返しで聞き返してきた言葉にドライバーの柴田は驚いた。


 「な…なんや大きな声ださへんでも聞こえとるわ…!


 そうそう…名古屋はもうとっくの昔に過ぎたで…!!」


 殿の頭の中に懐かし那古屋城の姿が浮かんだ…。


 安土城をたち京の都に入った後、明智光秀の謀反の末…命がけで南蛮の伝道者達が密かに持ち込んだ“魔王の書”の方術を使いこの異界の地に辿り着いたものの、赤い光を放ちけたたましい音を鳴らしながら走る四輪の車に、京の都中追いまわされて明日の身がどうなる事もわからずにいたこの数日間であったが‥懐かしい故郷の土を再び生きて踏むことができると思えば心も震え声も弾んだ。