若者の動きに気づいた殿は、若者に手を差し出した。


 はっと我に返った若者は慌ててその袋を差し出した。
 その様子に殿は尋ねた。


 「…この金判をやる代わりにその着ている衣と交換してほしい。」


 巾着袋から金判を取り出しちらつかせた殿は若者に交渉した。


 「…えっ…!?
 ああっ…いかんいかん!
 俺これからこのトラックに乗ってバイト行かんといけへんし…これバイトの作業服やから…!」


 慌てて申し出を断りつつも…金判に視線は釘付けになっていたのを見逃さずその金判を差し出した。


 若者はうろたえながらその金判をひったくるように受け取り、金の重みを感じながら何度も金判に噛みついて感触を確かめた。


 「あれに乗るのか?」


 先程の若者の発言に、目の前に並ぶトラックという巨大な荷車を指差し尋ねた。


 「ああ…。
 そうそう…。
 このトラックに乗って…京都から品川まで荷物を運ぶんだよ!!
 俺は…その補助のバイトで荷物を運ぶのを手伝うんやけどな!」


 「なにっ!?
 これでかあ…!」


 若者の答えに殿は…子供みたいにその巨体な荷車を眺め嬉しそうに声をあげた。


 「積み荷を運ぶのを変わりにわしがやるから…衣を交換してくれぬか!」