若者は殿をみて歓喜の声をあげた様子を見て殿は一礼した。
「…お主の前途を祝して“敦盛”を贈ろう!」
殿は‥若者が見ている前で敦盛の舞を踊り始めた。
「人間五十年‥。
下天の内を‥。
くらぶれば‥。
無限の如くなり‥。
ひとたび生を得て‥。
滅ばせぬ者の‥。
有るべきか‥。」
〈幸若舞:『敦盛』引用〉
“敦盛”の『人間五十年』の舞終わった殿は、若者の前で一礼した。
「継続こそ力なりじゃ…!
諦らめず励めば何らかの徳に恵まれるはずじゃ‥。
これからも励まれよ!」
力強い殿の言葉に若者は‥グッときてありがとうと何度も繰り返しお礼をのべて固く握手を交わした。
若者と意気投合し心を通いあわせた後‥再び酒を交わしながら二人だけの酒宴は盛り上がり若者は石の長イスの上でグーグー寝息を立て始めた。
「酒に弱い奴だな!」
若者を起こそうとした時近くを赤い光を交互に鳴らしてけたたましい音をたてながら四輪の乗り物が数台駆け抜けるのを見た殿は身をかがめた。