「麦や…!
 麦とホップちゅう成分でできてるんやで!」


 「おう!
 こんな珍しく酒を頂けるとは…感無量だ!」


 殿は初めてのビールの試飲にはしゃいだ様子をみて若者は和やかな瞳で殿を見た。


 「あんた…!
 不思議な人やなあ…!
 今時…あんたみたいな人おらへんで!
 俺なんか…。」


 若者はふっと寂しい顔をしてビールの缶を口に運んだ。


 「何かあったのか?
 申してみよ!?」


 若者はまたも申してみよという言葉に笑いながら話始めた。


 「俺…これでもインディーズのバンドやっとるんや…!
俺にとっては…バンドは俺の人生の命や!
 せやけど…バンドメンバーは売れへんからいうて…次々と止めてゆくしな…!
 ついに1人になってもうて…!」


 「裏切りか!?
忠誠を誓いながら心変わりなどゲスな奴らだ!
 そんな奴らなど考えるな!
 夢を大願するのにはいらぬ者達だ!」


 殿は寂しく酒を飲むその若者の話をきき叱咤激励を飛ばした。


 「なんや…ほんま。
 今の心にジーンときたわ…!
 そーやな…!
なんぼでも…バンド好きな奴見つければええもんな…!」