「長谷川さーん」

「えっ」

名前を呼ばれて振り向くと、女子がふたり立っていた。

「なんで?」

同じクラスの桐島(きりしま)さんと篠山(しのやま)さんだ。

「長谷川さん遅いよぉー」

長い巻き髪を指に絡めながら桐島さんが近付
いて来る。

「待ちくたびれちゃったじゃーん」

その後ろから篠山さんも近付いて来る。

「ていうかぁー、本当に来るとか!」

桐島さんが動くたび強い香水の香りがする。

「超ウケるんですけど!!」

ふたりの会話で何が起きてるか理解する。

「なんであたしのこと呼び出したの?」

「うちらさぁー、長谷川さんに話したいことあってぇー」

「なに?」

「横尾くんと委員同じだからって調子のんなよ!」

ダンッと音を立てながらあたしの真横の壁を叩く桐島さん。その後ろで篠山さんがくすくすと笑っている。