事務所を出て帰ろうとしていたら、

「じゅりこ」

優助に呼び止められた。

「優助。どうしたの?」

「いや…。今日、誕生日だろ?」

「よく覚えてたね」

「5月30日がくるたびに、毎年思い出してたから」

「そう」

事務所の人たちが、1人減り2人減り…3人減り…
あたしと優助は2人きりになってしまった。

「じゅりこも27になったんだな」

「そうだよ。早いよね」

「誕生日おめでとう」

優助はポケットから何か取り出した。

「シャープペン?」

「そう。オマエ、ボロボロのヤツ使ってるから。それやるよ」