「そのふたつについて答えがほしいのなら教えてあげるわ。だからその前に」

そしてその指が、

「純の入れたコーヒーを飲みなさい。美味しいのよ。これを飲まないなんて万死に値するわ」

ピ、ピ、と僕の前に置かれたカップを差した。

……こんな時に、こんな話題を振っておきながら、僕の今までを掻き乱しておきながら、なんて悠長なんだろうと思った。

が、

「飲みなさい。コーヒーじゃなく、万死を味わいたいの? 一万通りの殺人方法なんて、私にしてみれば容易に思い付くわよ?」

真輝さんのそれは悠長なのではなく、ただの強制だった。

夫が入れたコーヒーを残すことなんて許さない。この味に酔いしれ、理解し、そして夫に「美味しいです」という最上級の褒め言葉を捧げろ。

そういう、強制だった。

純さんが、ニコニコしながら真輝さんに言う。

空中で、お茶を濁すように手がぶらぶらと円を描いた。