だけど、僕は今まで、自分が全うな人間の中にある、ほんの少し特殊なケースだと思っていた。

たとえば、生まれながらに体の一部が変異しているとか。

世界にはそんな人、たくさんいるじゃないか。

指が一本多かったり、尻尾が生えていたり。そんなものだと思った。

三つ目による透視や遠視の力だって、テレビなんかで見る超能力だと。

そう。すべてはあくまで、『人間』という枠組みの中で言える特殊なものだとしか思っていなかった。

それなのに、いきなり、僕の今までの全存在と過程を、僕が今まで思い抱いていた自己定義が根本からすげ替えられてしまっては、ショックを受けるなと言うほうが無理だった。

「真輝、いきなりそれはきついよ」

笑いながら溜め息を漏らすという器用さを見せる純さんが、そしてウィンクを寄越す。