純さんも真輝さんも、そのことにはなにも言わない。

ただ、まるで空中に広げられた手帳を指でなぞりながら読むかのように、ゆっくり唇を動かす。

「別に一二三も、人間が嫌いってわけじゃないのよ。だから普通に学校に通いもするし、今まで何人かきちんと友達もいた。だけど、鬼であろうとする一二三はその分、人外へ対する意識が強すぎるのよ。そう、今で言うなら、アナタね」

「ぼ、僕?」

「そう、アナタも人外でしょう?」

「えっ、なっ」

「私はじかに見てはいないけど、そのひたいにある力ぐらいは簡単に見破れるわ。それは、〝人〟の範疇にある力じゃない。さしずめ、三つ目鬼といったところかしら?」

どう、当たり? とでも付け加えるように、真輝さんがわずか、首を傾げる。

だけど僕は、

「ちょっと待ってくださいよ……僕が、……僕が人間じゃ、ない……?」

そんなものに、かまけてはいられなかった。