「驚かないんだね?」

「あ、いえ、ああはい、充分驚いてます、これでも」

慌てて取り繕い、付け加える。

「でもあの、僕もそんな、まっとうな人間とは言えないので、その」

「――三つ目の件だね」

「! なんでそれを!」

純さんから簡単に出てきた単語に、驚く。

いや、本当に驚いたのは、その言葉が出てきたということじゃない。

純さんが僕に三つ目があるという事実を知っていながら、それがさも世の中の当然という顔でいることが、驚きだった。

「驚くというのは、今この話し合いの間だけ禁止よ、六条」

と、真輝さんが冷たく現場を制す。

僕は、いつの間にか浮かしていた腰を静かにソファーへ落ち着けた。

どうやらこれから、驚かずにはいられないことばかりが飛び交う予感がする。

だとしたら、いちいち耳を疑っていては時間が無駄になる。

僕は静かに、ひとり、妙な覚悟を決めていた。

「順を追って話をするわ。しっかり聞いていて」

「はい」

確認を取った真輝さんが、そして、一息、ついた。

まるでこれから、怪談をするような空気だ。