純さんは、よく笑う人だ。

その場の空気に逐一、人の動作に逐一、言葉のは暫しに逐一、ニコニコと笑う。

まるで、笑うことを宿命付けられたかのように、彼の笑みは自然で、かつ機械的だった。

「本題に入ってもいいかしら」

と、真輝さんが言った。コーヒーカップが、ソーサーに戻される。

「まず混乱を避けるために今、アナタがどういう状況に置かれているのか話してあげるわ。どうせ一二三のことだから、満足な説明なんて一切してないんでしょう?」

「あ、はい。説明とかは、なんにも……」

真輝さんの横で、純さんがやれやれと溜め息を漏らしていた。

一二三さんの言葉数が少ないのと、話が微妙に遠回りするのは、どうやらいつものくせらしい。

真輝さんの真っ黒い瞳が、僕の目を一直線、捉えた。

「最初に話しておくけれど、一二三はまっとうな人間ではないわ」

「……」

沈黙していると、純さんが不思議そうな顔をした。