テーブルからカップを持ち上げたお母さんが、鼻から息を、肩から力を抜く。

「私の喋り方が高圧的だとか、今はそんなことはどうでもいいわ。肝心なのは、この子とあの子がどれくらいの接触をしているか、よ」

「あ、あの、僕と一二三さん別に、付き合っているわけじゃ」

「そんなこと、言われずとも百も、千も、億も承知しているわよ。このヘタレ」

「ヘタ……」

ひょっとしてなにか勘違いされているんじゃないかと思った僕のほうこそが、勘違いしていたらしい。

いや、勘違いどころか、まだなにも現状を理解できてない。

話の本題は僕と一二三さんを主格に置いておきながら、けれど、どこか微妙にずれたところにあるような気がした。

「ぁ、あの、それで話っていうのは、いったい……?」

お母さんの背後にかかっている丸い時計の短針は、まもなく六時をすぎようとしていた。

僕は部活には参加していないから、あんまり帰りが遅くなると香澄姉さんが心配してしまう。

できるだけ早く話をして、できるだけ早くおいとまできたら、それがいい。