お母さんが、む、と眉間にしわを寄せた。

「うるさいわよ。私が相手をどう見ようと、それは私の勝手だわ。ねえ、そうでしょ?」

そして、僕に同意を求めてくる。

出逢ってまだ五分もしてない相手に、そんな価値観の同意を求められても、困る。

しかもその対象はほかでもないこの僕だ。

さっきの視線から察するに、お母さんはあまり僕を評価してくれてない。

それはつまり、自分はつまらない人間ですと自虐することになる。

「あ、いえ、その」

「ほらほら、困らせたらダメだよ真輝。ただでさえ君は高圧的なんだから」

言いよどんでいると、おじさんの助けが入る。

高嶺の花という言葉があるけれど、このお母さんが乗っているのは、彼女自身が積み上げた自信の階段なんだと思った。

たぶんきっと、一二三さんをお嫁にもらいたい男は、お父さんよりもこのお母さんを陥落する方法を考えなかなきゃいけないんだろうなと、つまらないことを考える。