人だかりのせいで僕たちは掲示板から三メートルほど離れてるし、彼女・大竹幹はメガネをかけてはないけど、目がいいというわけじゃない。

見えないのも仕方がない。

「ごめんごめん」

と謝って、僕は空中に指を走らせた。

「『風』に『間』と『一』『二』『三』が並んでる」

「…………ごめん。君の説明は恐ろしく伝達されにくいね。隠喩なの? 直喩なの?」

「……そもそも比喩じゃ、ないんだけど……」

下手だろうか、僕の説明。ざっくばらんな性格をしている幹に言われると、ひどくこたえる。

これ以上説明しても、たぶん要領を得ないままぐだぐだになってしまうかもしれない。

幹に何度眉をしかめられることを長い付き合いから想像した僕は、名前の読みを聞くのを諦めた。